2025年6月、人気ストリーマーたちが参加するGTA 5の企画「MADTOWN」での一幕が、国境を越えた大規模な炎上騒動に発展しました。配信者のファン太氏、にじさんじ所属VTuberの魔界ノりりむ氏、そして同じくにじさんじ所属の叶氏による配信中のやり取りで何が起きたのでしょうか？

この一件は、国内外の文化ギャップや、切り抜き動画のリスクといった現代の配信文化が抱える課題が浮き彫りになりました。

発端：2025年6月7日の配信

問題の出来事は、2025年6月7日に行われた「MADTOWN（β）」7日目の配信中に発生しました。ゲーム内で魔界ノりりむ氏のキャラクターが行動不能になった際、以下の流れで展開されました。

この一連のやり取りは、当事者たちの間では「プロレス」や「身内ノリ」として行われたものでした。

炎上の拡大：国境を越えた誤解と悪意の切り抜き

このシーンは、まもなく第三者によって切り抜き動画として編集され、SNSで拡散。特に海外、とりわけ中国のファンコミュニティで大きな問題となりました。

拡散された動画には、りりむ氏が本当に泣いているかのように見せる捏造や、意図的に文脈を無視した誤訳が加えられていました。これにより、単なる「悪ノリ」は「集団によるセクシャルハラスメント」として受け取られ、国際的な炎上へと発展。叶氏のSNSには中国語での批判的なリプライが殺到し、「炎上タグ」が作られる事態となりました。

この影響は実利的な損害にも及び、叶氏がプロモーションを担当する予定だったゲーム『鳴潮』の案件が中止になるなど、深刻な影響が出ました。

渦中の3人による対応（2025年6月10日）

炎上の拡大を受け、6月10日、関係者3名はそれぞれ自身のプラットフォームで声明を発表。その対応は三者三様でありながらも、事態の収束を図るという共通の意図が見られました。

叶氏の謝罪と事態収束への試み

• 全面的謝罪と反省： まず「悪ノリが過ぎた」「（視聴者からの）見え方が良くなかった」と自身の非を認め、視聴者に不快感や不安を与えたことについて深く謝罪しました。
• 当事者間での解決報告：騒動後すぐにりりむ氏に直接連絡し謝罪したところ、「全く問題ない」との返答を得たことを報告。当事者間でのわだかまりがないことを強調しました。
• 炎上の構造分析：炎上が拡大した原因の一つとして、事実と異なる悪意ある翻訳や捏造された切り抜き動画の存在を指摘。海外ファンに誤解が広まった構造を説明しました。
• 再発防止と今後の姿勢：今後は「行き過ぎたノリや誤解を招く行動がないよう気をつける」と約束。また、この件に関する言及はこの配信で最後にするとし、騒動の長期化を避ける姿勢を見せました。さらに、視聴者同士での攻撃的な応酬を止めるよう強く呼びかけました。

ファン太氏の謝罪と関係継続の意思表示

• 率直な謝罪：「不快に思った方には申し訳ない」と直接的な言葉で謝罪の意を表明しました。
• りりむ氏との関係性を強調：りりむ氏から「気にしないで」という趣旨の連絡があったことを明かし、当事者間の良好な関係をアピール。普段から行われる彼の「セクハラ芸」ともいえるスタイルが、今回は大きな問題に発展したという背景があるものの、「今後も変わらず接する」と、りりむ氏との関係性を継続する意向を明確に示しました。批判の多くは叶氏に集中したものの、行動の主体であったファン太氏も真摯な対応を見せました。

魔界ノりりむ氏の毅然とした声明

当事者とされたりりむ氏は、X（旧Twitter）と自身の配信で、被害者扱いされることに強く反発し、自身のスタンスを明確にしました。

• 明確な意思表示：「全く嫌な気してない」「エンタメだと分かってる人は楽しんでると思う」とXに投稿。憶測で自身の気持ちが代弁されることを拒絶しました。
• 「プロレス」という関係性の説明：自身の配信では、ファン太氏とのやり取りが、お互いのリアクションを楽しむ一種の「プロレス」であったと説明。ただし今回はいつもと状況が違い、自身も少し驚いたという複雑な心境も明かしました。
• ファンへの呼びかけ：「これからも、にぃやん(叶くん)とファン太さんと仲良くしたい」と関係継続を強調。ファンに対して「りりむのことちゃんと考えてくれる人は誰かを叩くんじゃなくて」と、冷静な対応を求めました。
• ユーモアによる幕引き：声明の最後を「黙ってりりむのヘリを褒めろって言ってんの！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」と彼女らしいユーモアで締めくくり、騒動を深刻に捉えすぎず、前向きな姿勢を貫きました。

https://twitter.com/makaino_ririmu/status/1932430733823590797

炎上の背景にある国内外のギャップと論点

この騒動で、叶氏の「好き嫌い.com」の掲示板には10万件以上のコメントがつくなど、議論が過熱。その背景には、いくつかの根深い問題が存在します。

• 文化と感性の違い：日本のファンコミュニティでは「いつものノリ」「文脈を無視した切り抜きが悪い」といった擁護意見が優勢でした。しかし、中国をはじめとする海外では、たとえロールプレイであっても公共の電波に乗せるべきではないセクハラ行為とみなされ、厳しい批判が集中しました。
• エンターテイメントの線引き：本人たちが「嫌ではない」と表明しても、その行為が公開の場で配信されることの是非が問われました。不快に思う視聴者がいる以上、配信者はどこまで配慮すべきか、という難しい問題が浮かび上がりました。
• 切り抜き動画のリスク：悪意ある編集や誤訳によって、本来の意図とは全く異なる形で情報が拡散される危険性が改めて示されました。

配信文化に投げかけられた課題

この一件は、ゲーム配信内の「悪ノリ」が、悪意ある第三者の介在によって国際的なセクハラ騒動へと発展した典型的な事例です。りりむ氏本人が問題視せず、叶氏とファン太氏も謝罪し関係継続を強調したことで、当事者間の問題は解決しています。

しかし、この騒動は日本の配信文化が持つ内向きな側面と、グローバルな視聴者層との間に存在するギャップを浮き彫りにしました。配信者は今後、多様な文化や価値観を持つ視聴者の存在を常に意識し、切り抜きという形でコンテンツが予期せぬ文脈で消費されるリスクを、より一層考慮した活動が求められることになるでしょう。

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