【最南端】国土を守る沖ノ鳥島ってどんな島?【形成史】

沖ノ鳥島 小笠原諸島

日本の最南端の沖ノ鳥島について紹介します。

この記事の対象
  • 沖ノ鳥島の環境・気候を知りたい方
  • 沖ノ鳥島で行われている事業について

沖ノ鳥島の概要

沖ノ鳥島は小笠原諸島に属する日本の最南端に位置する島です。また、巨大な領海及び排他的経済水域を保つ重要な島でもあります。

国土交通省関東地方整備局特定離島港湾事務所「沖ノ鳥島の風景」

位置

住所は東京都小笠原村沖ノ鳥島、1番地(北小島)と2番地(東小島)です。

沖ノ鳥島は東京都心から南へ約1,740㎞に位置し、小笠原諸島父島からでも約910㎞離れています。

緯度はハワイのホノルルと同程度、経度は滋賀県の琵琶湖と同程度です。

島の形状は、東西に約4.5㎞、南北に約1.7㎞、周囲11㎞の卓礁で、礁内の面積は約5.8㎢となり、東京ドーム107個分もの大きさになります。

低潮位では、かなりの大きさが陸地となりますが、高潮位では、北小島と東小島のみが水面上に残るだけです。

画像参照:東京大学大学院理学系研究科 明らかになった沖ノ鳥島サンゴ種リスト

沖ノ鳥島によって生まれる排他的経済水域は、国土面積より大きい約42万㎢にも及びます。

環境

沖ノ鳥島は日本で唯一北回帰線より南にある熱帯気候で、年平均の気温は26.8℃、海水温は27.7℃です。台風の発生する海域に近く、毎年多くの台風が通過します。
波の高さは、年平均で1.3m、台風などの最大時は16mを越える波が発生し、風速は年平均で6m/秒、台風接近時は50m/秒を越える値が記録されるなど、日本で最も厳しい海です。

種の多様性な熱帯にありますが、サンゴの種は93種と少ないことを明らかになっています。これは、より高緯度にある八重島諸島(368種)の4分の1、マリアナ諸島(205種)の2分の1、かなり北方である九州天草(98種)と同程度です。

沖ノ鳥島の種の多様性が少ない理由として、島が小さな卓礁でサンゴの生息域の多様性が小さいこと、孤立した島であるためサンゴ幼生がたどり着く機会が少ないことがあげられています。

成り立ち

沖ノ鳥島は、急峻な海山の頂上に発達した環礁で、九州からパラオまで南北に連なる九州-パラオ海嶺の中央にあり、パラオ以外では唯一海面に達しています。
2300万年前~500万年前が属する中新世よりも以前に形成された火山島が水没して、その上に、約1,000㎞離れた小笠原諸島や沖縄から辿り着いたサンゴが1,500万年もの歳月をかけ、1,500m以上も堆積して造られました。
準卓礁に分類されるサンゴ礁で周辺部の浅い部分(礁嶺)と、内部の水深3~5mの部分(礁湖)からなります。
島の外側斜面は、急傾斜で、水深は4,000~7,000mに及び、断面は、富士山に似た形状となっています。

沖ノ鳥島での活動

事業

国土交通省 関東地方整備局 特定離島港湾事務所

平成22年6月に沖ノ鳥島が「特定離島」として指定されました。

『排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律施行令』
における地理的条件、社会的状況及び施設整備状況等から沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域等の保全及び利用を促進することが必要な離島である「特定離島」として国土交通省関東地方整備局 特定離島港湾事務所は調査、整備を行っています*2。

沖ノ鳥島及びその周辺海域で活動する船舶の係留、停泊、荷さばき、北小島等への円滑なアクセス等が可能となるよう、岸壁、臨港道路等の港湾施設の整備に必要となる現地測量調査等を行い、早期の整備を目指します。

国土交通省関東地方整備局 特定離島港湾事務所

特定離島事務所によって、現地測量調査等から岸壁・臨港道路等の港湾施設の整備が行われています。

国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所

沖ノ鳥島の保全として一年を通じて高温な熱帯気候であり、台風の通り道でもあるという厳しい自然条件から、昭和62年より鉄製消波ブロックやコンクリート等により、保全工事を実施されてきました*3。

これからの沖ノ鳥島の管理として補修や調査が行われています。

沖ノ鳥島の護岸コンクリートは、平成2年から5年に完成しました。しかし、経年的に劣化しているほか、厳しい気象条件の影響により、多数のはく離、ひび割れなどが発生しています。このような護岸の劣化を抑制し維持管理していくため、コンクリートの損傷についての調査や点検を行い、発見したひび割れの補修等を実施されてます。

また、沖ノ鳥島では、島の保全対策や今後の利活用検討のため、基礎的な調査・観測が行われています。

そして、沖ノ鳥島は我が国唯一の熱帯気候であるとともに、太平洋の孤島であり陸地の影響をほとんど受けないという特色があります。このような特色を活かして、島自体の調査だけではなく、日本のみならず国際的にも意義のある防災・学術の観点から、島外に応用されるようなさまざまな実験が実施されています*4。

沖ノ鳥島 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所

漁業調査指導船『興洋』

小笠原水産センターに所属する興洋が漁業調査指導船を活用しながら、東京都の海域における水産資源や海洋環境の調査・研究、漁業の普及や指導に取り組んでいます*5。
小笠原諸島の海域は、日本の排他的経済水域の約3割を占める広大な海域であり、そのうち小笠原海域(聟島、父島、母島、火山列島海域)~沖ノ鳥島海域を『興洋』が担っています。

「沖ノ鳥島調査」としてひき縄調査や底釣調査、礁内での潜水調査等を実施して、豊かな漁場としての可能性がある沖ノ鳥島周辺海域の有効利用に向けた調査が行われています*5。

参考画像(東京都小笠原支庁 水産センター 「興洋」の主な仕事 *5)

『興洋』の他の業務として小笠原近海18地点の海洋調査、ネットや縄を用いた調査による特定生物の生態調査、マルチビームソナーを用いた海底地形の調査なども行っています。

漁船 第三海洋丸

沖ノ鳥島周辺海域で操縦する漁船として平成18年度から「第三海洋丸」が地元小笠原の漁法である「立て縄漁業」で操業しています。

平成17年度には、沖ノ鳥島周辺海域の広い範囲で漁場を探るため、「第五有漁丸」が「延縄漁業」で操業していました。

また大型回遊漁などの漁場を造成し漁獲の効率化を図る目的として平成18年度に東京都では、沖ノ鳥島周辺海域における漁業操業支援の一環で、「大水深中層浮魚礁」を3基設置されました。魚類などの水産生物が水中の物体に集まる習性があることを利用した「大水深中層浮魚礁」により、漁業の対象となる魚類などを特定海域に誘導することが可能です*6。

参考文献

*1 明らかになった沖ノ鳥島サンゴ種リスト 茅根 創(東京大学大学院理学系研究科 教授)
*2 特定離島港湾施設の整備 南鳥島,沖ノ鳥島 国土交通省 関東地方整備局 特定離島港湾事務所
*3 これまでの沖ノ鳥島の保全 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所
*4 これからの沖ノ鳥島の管理 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所
*5 水産センター 「興洋」の主な仕事 東京都小笠原支庁
*6 沖ノ鳥島周辺海域での漁獲概要 東京都産業労働局

Solverwp- WordPress Theme and Plugin

タイトルとURLをコピーしました