【小笠原諸島】日本の南国、父島、母島【海底火山】

小笠原諸島海岸 地理
うみた
うみた

小笠原諸島が生まれた時期や由来について説明していくよ!

小笠原諸島の観光地域の側面ではなく、周辺海域や地域の成り立ちといった地学的な側面に注目して紹介します。

この記事の対象
  • 小笠原諸島の父島、母島のなりたちについて知りたい方
  • 小笠原諸島の気候と地質について

父島・母島の概要

まずはじめに、小笠原諸島の父島・母島の位置や環境について紹介します。

位置

父島・母島は東京都に所属する、東京23区の南南東約1,000kmの太平洋上に浮かぶ島々です。

環境

多くのサイトや資料において小笠原諸島は亜熱帯海洋性気候だとよく言われています。

ケッペンの気候区分ではどうでしょうか。

ケッペンの気候区分において亜熱帯気候はありません。
小笠原諸島が属するとすれば熱帯か温帯です。熱帯と温帯においての違いは以下の通りです。

熱帯

気温

一番寒い月の平均気温が18℃以上
(すべて月で平均気温が18℃を超える)

温帯

気温

一番寒い月の平均気温が-3℃以上18℃未満
一番暖かい月の平均気温が10℃以上

小笠原諸島においては一番寒い月(2月)が18℃を超えるかどうかが温帯か熱帯かの論点となります。次に気象庁が公開する小笠原諸島の気候の情報からどの気候区分に属するのか説明します。

参考 気象庁:父島1970年
参考 気象庁:父島1991~2020年

これらの情報からわかる通り、父島は1970年において最寒月(2月)の気温は17.7℃18℃を下回っています。つまり熱帯ではなく温帯に属してました。しかし、ここ30年において2月平均気温の平年値は18.1℃で18℃を上回っています。直近では2022年では18℃を下回っていましたが、多くの年で、最寒月が18℃を上回るようになりました。

ちょうど熱帯と温帯の境目であり、温暖化の影響からか最近は徐々に熱帯に属するようになりつつあると言えます。

小笠原諸島の気候

ケッペンの気候区分では、温暖湿潤気候(Cfa)に分類されてきました。
平年値(1991~2020年平均)では、最寒月(2月)の気温が18℃以上となったことで熱帯と言えます。小笠原諸島の気候区分を熱帯とするならば、降水量の最少月は2月で51.6mmなので熱帯モンスーン気候です。
ここで、2月の降水量が60mm以上なら、熱帯雨林気候(Af)となります。

したがって、小笠原は限りなく熱帯雨林気候に近い熱帯モンスーン気候(≒亜熱帯)と言えるのです。

父島と母島のなりたち

父島・母島の成り立ちを地質や周辺海域に注目してどのようにできたか説明していきます。

海底火山について

海底火山の成因

海水面下には陸上のような火山がたくさんあり、それらを海底火山といいます。

海底火山の成因は大きく3つあり、「プレートの沈み込み」、「プレートの広がりによる海嶺」、「ホットスポット」です。

日本はプレートの沈み込みによる島弧上にあり、島弧に沿ってマグマも発生するため、それらはマグマ弧とも呼ばれます。

新たな要因

プレートの沈み込みによってプレートが曲げられるときに、プレート内部が破壊されて割れ目が生じることで、プレート直下のマグマが海底まで通りでてくるメカニズムです。

実例として、日本海溝に太平洋プレートが沈み込むために、地球内部方向に曲がりはじめる場所の海底が大きく盛り上がっています。この位置でごく最近の火山活動(5~103万年前)が確認されました*3。

海洋プレートが大陸プレートにぶつかって大陸プレートから海洋プレートに加わる力と中央海嶺から押し出されるために海洋プレートにかかる力が押し合うことで割けるようなほど大きな力となってしまうと言えば分かりやすいです。

形成時期と周辺地質

小笠原周辺の時事

父島・母島が生まれた時期について時系列に沿って説明します。

小笠原諸島は生まれた時期は5000~4500万年前です。

小笠原諸島ができる以前、九州-パラオ海嶺と小笠原諸島付近の地形(伊豆、小笠原、マリアナ島弧)は一体だったことがわかっています*2。
日本本州の形成のように太平洋プレートの沈み込みによって海底火山が活発になり、小笠原諸島が形成されました。

それぞれの島が形成された時期は
父島以北は5000万年前
母島以南は4500万年前
です。

父島は、隕石に良く含まれる単射エンスタタイトという乳白色の輝石が含有されたマグネシウムが多いボニナイト(無人岩)が多い地質です。対して、母島は玄武岩や安山岩といった本州と岩石自体の地質にあまり違いはありません。
この地質分布の違いから父島と母島の形成時期に差があると考えられています。

5000万年前~
単射エンスタタイトは、地球上の岩石においてボニナイトボニナイトマグマがゆっくりと冷えてできた深成岩にしか産出しません。また、ボニナイトマグマができるためには、通常の島弧マグマよりもかなり浅いところで水を含んだマントルのカンラン岩が溶けたときにできると考えられます*1。

基本的に多くの島弧の非常に浅いところではマントルの温度が低くカンラン岩は溶けないため、マグマは発生しません。

4500万年前ごろ
小笠原島弧と九州-パラオ海嶺と一体でした。海嶺であれば随時マントルが湧き上がってくるため、かなり浅いところでもマントルの温度が非常に高くなります。

したがって、ボニナイトマグマが発生した頃の小笠原周辺のマントルは非常に高温であったのです。父島をはじめとしたボニナイトの地質は母島の南東沖にもあり、マリアナ諸島からも見られます。
ボニナイトが生まれた島弧火山活動は、小笠原諸島からマリアナの広い海域の約5000万年前の一定期間にあった海底火山活動なのです。

この九州-パラオ古島弧の下に拡大を続ける海嶺が沈み込んだことでマントルが高温となりボニナイトマグマが発生した学説もあります。また他にも、5000~4500万年前の小笠原諸島周辺の地域にちょうどマントルの上昇流があったことでマントルの温度が高くなったという学説もあります。

~1500万年前ごろ
その後、小笠原島弧と九州-パラオ海嶺が分離していき、東西に拡大した背弧海盆として四国-パレスベラ海盆が生まれました。

母島ができた頃はマントルの温度が低くなっていたため、ボニナイトマグマができなかったというわけです。

地質的にボニナイトがあるかどうかで小笠原諸島周辺の海域において、5000万年前ごろに父島ができ、4500万年前以降に母島ができたとわかるのです。

地質

特徴的な主な地質を紹介します。

父島
・ボニナイト(無人岩)

母島
・玄武岩や安山岩(本州と似ている地質)
・貨幣石(大型の有孔虫化石が多く含有)

有孔虫化石

数千年前に絶滅した直径数cmの単細胞生物

したがって、父島と母島は同じ小笠原諸島で地理的に近いといっても、明確な違いがあるとわかります。

周辺海域

小笠原諸島周辺の特定海域や地域について、国や団体によって研究や保護における重要性が認められたところを抜粋して紹介します。

伊豆・小笠原海溝沖合海底自然環境保全地域

小笠原諸島の東側にある海溝は伊豆・小笠原海溝沖合海底自然環境保全地域*4に指定されています。本地域は日本海溝の最南部及び伊豆・小笠原海溝の周辺の海域から成り、水深6,000m以上の海域が南北に約1,120kmにわたって連なっています。本地域の大部分を占める伊豆・小笠原海溝は、 最深部の水深が 9,701m に達し、その面積は 99,801km2 に及びます。 本地域では、こうした海溝特有の高い水圧と低い水温の過酷な環境下において、特異な生態系が 成り立っています。

兄島海域公園

兄島の南側の海域。海水の透明度が高く、サンゴ礁のなかを色鮮やかでさまざまな魚が群れをなして生活しています。海域のツアーなどが開催されています。
兄島はほとんど人の手が入っておらず、原生状態が保たれています。

?伊豆・小笠原海山帯

小笠原諸島周辺の海底地形には、沖ノ鳥島から父島まで南北に連なる、南北約1,500 kmに及ぶ海山列があります。この海山列は、太平洋プレートが小笠原諸島の西側で太平洋プレート下に沈み込む際に、マグマが上昇してできたもので、小笠原諸島周辺の地質を形成する重要な要素となっています。その海山帯には伊豆大島、新島、神津島、小笠原諸島など、陸地として現れる島々が含まれています。

七曜海山列

伊豆諸島の最南端にある孀婦岩から西之島間には、現世の火山フロントをなす活動的海底火山と火山島の列である七島硫黄島海嶺があります*7。その七島硫黄島海嶺がある火山フロント上に、新規海山と考えられる7 個の海山「七曜海山列」が長く連なって分布しています。北から日曜海山、月曜海山と続き、最南端に土曜海山と名付けれました。頂部水深のうち土曜海山が一番浅く371m、水曜海山が一番深く860mです。

火山フロントと推定される位置にあることから第四紀火山と推定されていますが詳細は未だ不明です。水曜海山西峰の山頂部にある深さ500mのカルデラ内で、活発な熱水が噴出する酸化物チムニーが1992年に発見されました。熱水の温度は230~311℃であり、phは25℃で3.7前後です。閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱などの鉱石が採取されており、一部の鉱石からは、金含有量の最高が71ppm、硫化物24試料の平均含有量は16ppmと、これまで知られている海底熱水鉱床のなかでも最高品位の金が含有していることが明らかになっています。木曜海山でもカルデラの中で複数の熱水の噴出箇所が確認されています。

小笠原海台

小笠原海台は、西太平洋のほぼ東西に配列するマーカス・ウォーク海山列の西端に位置しています*6。南北に伸びる伊豆・小笠原海溝とマリアナ海溝のほぼ接点に位置します。この付近の東経145度以西の地形的な高まりが連続する海山列であることで「Michelson海嶺」と名付けれているこれらの高まりも含めて、わが国では小笠原海台という名称がつけられています。

小笠原海台北部

水深2500m〜2500mの範囲が広く広がる海域である。水深1500〜2500mは生物の多様性が高いという研究結果も出ています。

海山

面積4919km2
最大水深5644m
?父島海山

父島海山は、父島の南東約100 kmの海上にある、約4,000 mの海山で、活火山です。父島海山の緯度は北緯25度56分、経度は東経141度23分です。

海形海山

北硫黄島の北北西約 140km にある浅部水深 162mの海山でその基部は水深 3,500mにあり、南部の海徳海山とは水深 2,200mで尾根を接します。海形海山頂部には頂部水深 426mの東峰と北東-南西に連なる 3 つの峯からなる西峰列(頂部水深北より、475m、162m、625m)とがあります。東峰にカルデラ地形が認められ、最大径 3km、最大水深 930mです。また、海山の西及び北斜面には側火山と推定される高まりが数個所認められています。東峰からシソ輝石普通輝石安山岩、西峰から斜方輝石安山岩、普通輝石カンラン石玄武岩等が採取されています。また、本海山には熱水活動の証拠が見つかりました。

海徳海山

海徳海山は北硫黄島の北北西 80km にあり、基部 40km、比高約 2,500mで 3 つの峯からなります。南にある 2 つの峯はその位置により、東海徳場(26°07.6’N,141°05.9’E,水深 95m)、西海徳場(水深 103m)と呼ばれています。1543 年に 26°00’N,140°46’Eで海底噴火の報告がありましたが、海徳海山付近での確実な噴火記録は 1984 年の東海徳場での噴火です。北峯(頂部水深 506m)の岩石は非アルカリ玄武岩(SiO2 48%)であるが、1984 年の噴火のときに東海徳場から噴出した軽石は石英安山岩でした。

南硫黄島南・海山群?南硫黄海山310

南硫黄島の南南東沖の海域で、化学合成生態系(熱水噴出孔など)や多くの海山を含む海域です。この海域に存在する日光海山ではサツマハオリムシの密集域が確認されています(藤倉ら, 2008)。

化学合成生態系
海山

面積66542km2
最大水深4592m
1.唯一性、又は希少性次のいずれか、又は複数を含む地域、
(i)    唯一性(ある種の唯一の分布域)、希少性(特定の地域にのみ分布)又は固有性を持つ種、個体群、又は生物群集
(ii)   唯一性、希少性を持つ、又は特異な生息地・生態系
(iii)  唯一又は独特な地形学的又は海洋学的特徴を持つ場所
1a 固有種の分布域
1b 種の唯一の生息地等
1c 特異・希少な生態系
4.脆弱性、感受性又は低回復性(人間活動又は自然事象による劣化・消失に非常に影響を受けやすいなどの)機能的脆弱性をもつセンシティブな生育・生息地や種が、高い割合で見られる場所。また回復に時間がかかる場所4a 低回復性の種・生態系
4b 脆弱性・感受性の高い種・生態系
5.生物学的生産性高い生物学的生産性を持つ種、個体群、又は生物群集を含む場所5a 栄養塩を起源とした生産性の高い場所
5b 化学合成生態系
6.生物学的多様性高い生態系の多様性(生息・生息地、生物群集、個体群)、又は高い種の多様性、又は高い遺伝的多様性を含む場所6a 種の多様性
6b 生態系の多様性
6c 遺伝的多様性
8.典型性・代表性我が国の代表的な生態系や生物群集などの特徴を典型的に示している場所8a 典型的・代表的な生態系や生物群集などの特徴を示している場所
8b 典型的・代表的な物理環境の特徴を示している場所

南硫黄海山は、御蔵島の南東約140 kmの海上にあり、約1,400 mの海山で、噴火によって硫黄が堆積していることから名付けられました。

?北硫黄海山

北硫黄海山は、御蔵島の北東約130 kmの海上にあり、南硫黄海山と同様に、約1,400 mの海山です。

硫黄島海嶺西側斜面

北硫黄島、硫黄島、南硫黄島が連なる硫黄島海嶺の西側斜面の海域である。硫黄島海嶺から深く落ち込む海底谷などが特徴の海域です。

海底谷

面積16282km2
最大水深4338m
8.典型性・代表性我が国の代表的な生態系や生物群集などの特徴を典型的に示している場所8a 典型的・代表的な生態系や生物群集などの特徴を示している場所
8b 典型的・代表的な物理環境の特徴を示している場所
?相模トラフ・南部海山

東京海底谷、相模湾、駿河湾から急峻に落ち込む海底谷一体と相模湾から房総半島と大島の間を抜け330kmの長さを持つ相模トラフ、および南側に明神礁、水曜海山、木曜海山、海形海山までを含む海域です。
相模湾の相模トラフの東側には沖の山堆、三崎海丘、三浦海丘、相模海丘が並んでいます。相模湾では化学合成生物群集が多数確認されました(藤倉ら,2008)。相模トラフの房総半島南東沖には3つのプレートの境界が集まっています。これらプレートの相対運動を反映して複雑な海底地形と構造を持ち、大地震・火山も多いのです(海上保安庁水路部,1985)。駿河湾の海底谷の駆け上がりは、多様性が非常に高く(木村私信)、また、生物量も多く特殊な海域です(野中,岩橋, 1987; 三澤ら, 2007; 向井, 長谷, 1976)。周辺には日本固有のタカアシガニが多く生息しています(野中,岩橋,1987; 三澤ら,2007; 向井, 長谷, 1976)。明神海丘には大規模な熱水活動があり、ユノハナガニ、シチヨウシンカイヒバリガイなどの熱水噴出孔生物群集が存在します(藤倉ら, 2008)。水曜海山・木曜海山でもカルデラ底に熱水噴出活動があり、熱水域にはシチヨウシンカイヒバリガイやトゲオオハラエビなどが生息しています(藤倉ら, 2008)。海形(かいかた)海山も海底火山であり熱水噴出活動が見つかっており、オオマユガイ、シンカイフネアマガイなどが確認されています(藤倉ら, 2008)。銚子沖の水深800mくらいまでの海域にはこの沖合海域の固有と思われるようなナガヒタチオビ等の貝類が多いとわかっています(奥谷, 2000)。

化学合成生態系
海底谷

面積105,022km2
最大水深6791m

・重要度が高いとされた要因

1.唯一性、又は希少性
4.脆弱性、感受性又は低回復性
5.生物学的生産性
6.生物学的多様性
8.典型性・代表性
北マリアナ海溝

我が国のEEZの中に含まれる北マリアナ海溝の一部である。水深6000m以深の海溝生態系であり唯一性が特徴です(藤倉ら, 2008)。

北マリアナ海溝

面積12026km2
最大水深8872m

・重要度が高いとされた要因

我が国のEEZの中に含まれる北マリアナ海溝の一部であるとして専門家による意見により選定されたため

?伊豆諸島・七島・硫黄島西海山群

フィリピンプレートの南北に長く連なる伊豆諸島、七島・硫黄島海嶺から、西側の四国海盆および南海船状海盆に深く落込む海域である。当該海域には多くの海山が存在しています。これらの海山が連なる環境が特徴的な海域です(海上保安庁水路部,1985)。

海山

面積64803km2
最大水深5042

・重要度が高いとされた要因

1.唯一性、又は希少性
4.脆弱性、感受性又は低回復性
5.生物学的生産性
6.生物学的多様性
MARXANにより選定されたため

-沖合表層域-

小笠原周辺海域

当該海域は、小笠原諸島周辺の海域であり、世界の鯨類種の約3割が生息している。また、一部の島嶼にはアホウドリ類が繁殖しており、重要な索餌海域となっています。

【注記】沖合表層域は物理的に流動している(海流の流路や季節により海域特性が変動します、またこれらにともない生物の産卵場、分布域なども変動している)特色があることから、重要海域の区域を空間的に固定して抽出することは困難であるのです。また、利用できるデータや手法も現段階では非常に限られています。これらの課題はあるが、沖合表層図は、平成23-25年度時点で活用出来るデータ、解析手法を用いて機械的に行った結果として、沖合表層域の重要な海域の確率論的な分布を示すものとして作成されました。しかし、生態学的特徴からは連続していると考えられるような場所が、機械的な解析により分断されているなど問題もあるので、今後の見直しまでにさらなる調査を行ってデータの充実を図り、また解析手法の見直しも行い、精度を上げていく必要があります。

面積4143km2

・確認される生物情報の一例

 【哺乳類】
  ザトウクジラ(繁)

※掲載種は抽出基準に合致するとして解析に用いた種のリストであって、当該海域に分布する種全てではないとされています。

(繁):繁殖地
(産):産卵海域

・重要度が高いとされた要因

MARXANにより選定されたため

西ノ島周辺海域

当該海域は、亜熱帯水域に位置し、伊豆小笠原海嶺周辺海域にあたります。

(注記:平成23-25年度時点で活用できるデータ、解析手法を用いて機械的に行った結果として、当該海域が抽出されています。しかし、生態学的特徴からは連続していると考えられるような場所が、機械的な解析により分断されているなど問題もあります)

【注記】沖合表層域は物理的に流動している(海流の流路や季節により海域特性が変動します、またこれらにともない生物の産卵場、分布域なども変動している)特色があることから、重要海域の区域を空間的に固定して抽出することは困難であるのです。また、利用できるデータや手法も現段階では非常に限られています。これらの課題はあるが、沖合表層図は、平成23-25年度時点で活用出来るデータ、解析手法を用いて機械的に行った結果として、沖合表層域の重要な海域の確率論的な分布を示すものとして作成されました。しかし、生態学的特徴からは連続していると考えられるような場所が、機械的な解析により分断されているなど問題もあるので、今後の見直しまでにさらなる調査を行ってデータの充実を図り、また解析手法の見直しも行い、精度を上げていく必要があります。

面積4,916km2

・重要度が高いとされた要因

MARXANにより選定されたため

-沿岸域-

父島・母島列島周辺

父島・母島列島周辺の海域です。父島、母島を含む小笠原諸島は海洋島であり、陸域だけではなく、海域においても独自の種分化により多くの固有種が生息しています(日本政府,2010)。小笠原諸島はアオウミガメの最大の産卵地であり、その中でも最も多く産卵が行われるのが初寝の砂浜です(環境省,2001)。また、南島はアーチ状の岩穴をくぐって砂浜に至る産卵場として世界でも唯一の場所であるとわかっています(環境省,2001)。小笠原周辺海域には世界の鯨類の約3割の種が生息し、北太平洋におけるザトウクジラの重要な繁殖場でもあります(財団法人東京都海洋環境保全協会小笠原海洋センター,2002)。海鳥に関しても固有種であるアホウドリが繁殖する唯一の場所です。226種の造礁サンゴ類が報告されており、黒潮本流や赤道反流などの影響が少ないため、種の移出入は限定的で、種数は少ないものの、海洋島として特徴的なサンゴ群集を有しています。母島および母島属島(向島、姉島、妹島、姪島)の海岸線は、非常に高い生物多様性を擁しています。特に母島属島は無人島であるがゆえに帰化生物も少なく、在来の海岸植物が繁り、オカヤドカリ類が豊産しています(林ほか,1990)。海岸のタイドプールにネブリブカが集まるような場所もあります(加藤、私信)。日本で最も自然度の高く、また特異な生物多様性を擁する海岸と言ってもよい環境です。

・属する環境

サンゴ5.9km2
自然海岸の長さ215.2km
自然海岸の占める割合97.1%

・住所及び大きさ

該当市区町村東京都小笠原村
面積798km2

・重要度が高いとされた要因

1.唯一性、又は希少性
3.絶滅危惧種又は減少しつつある種の生育・生息地
6.生物学的多様性
7.自然性



北硫黄島周辺

父島の南南西207kmに位置する、火山列島(硫黄列島)の最北端の島の周辺海域である。現在は無人島であり、そのため自然度が高い。

・属する環境

自然海岸の長さ9.2km
自然海岸の占める割合100.0%

・住所及び大きさ

該当市区町村東京都小笠原村
面積46km2

・重要度が高いとされた要因

7.自然性

参考文献

*1火山学者に聞いてみよう-噴火現象と噴出物・岩石・鉱物 ボニナイト 海野 進
*2九州パラオ海嶺 地震本部 政府 地震調査研究推進本部
*3プチスポットとは?? 平野直人
*4伊豆・小笠原海溝沖合海底自然環境保全地域 環境省
*5小笠原海台周辺海域の海底地形とテクトニクス 春日茂 霧鳥史郎 大陸棚調査室員 環境省
*6生物多様性の観点から重要度の高い海域 環境省 環境省自然環境局
*7伊豆小笠原弧の七島硫黄島海嶺における熱水鉱化作用 渡辺一樹

海洋島第57号 南硫黄島の海底地形 - 東京都島しょ農林水産総合センター

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