~日本の最西端~与那国島の地質と形成史【八重山諸島】

地理

概要

与那国島は言わずもがな日本の最西端。台湾と隣接している地域です。1390年以前は、1つの首長国を形成していたことから、特有の文化が今も残り続けています。地名も与那国首長国→琉球国→与津藩→沖縄県に包括される歴史的変容をしていく中で変わっていきました。

今回はそんな与那国島について解説します。

位置・形状

与那国島位置
東京都から2,030km

東京から約2,030km、沖縄本島から509km、石垣島からは127kmに位置しています。台湾からは111kmと日本のほとんどの地域よりも台湾の方が近くにあります。

与那国島の面積は28.95km2、周囲27.49km、標高231.3mと200m級の山々で構成される島です。

気候

与那国島気象台:気象庁

年平均気温24.0℃、年平均湿度約78%の亜熱帯海洋性気候の島です。

与那国島の気象台の観測値を参考にします。

気温の変化を見ると、最寒月平均気温は1月の18.5℃で一年を通して18℃を下回ることがなく熱帯の気候区分に属します。また、月平均降水量が常に120mmを超えており、年間を通して基準の60mmを下回ることはありません。したがって、与那国島には熱帯雨林気候が分布しています。

温暖であるため、3月には海開きが行われています。

自然

崖が多い地形で、鳥獣保護区に指定されています。久部良岳のクバ林が有名です。

山地南部は風が強い特徴があります。

地質

山地の地質

日本の最西端位置する与那国島は沖縄トラフに近いところに位置する点で特色があります。与那国島は、波照間島のような全島がサンゴ礁段丘からなる島とは異なり、新第三紀層からなる丘陵をサンゴ礁段丘が取り巻き、さらに多数の断層で分断され、島は顕著な傾動を示す多数の小傾動地塊に分けられます。段丘面の傾動の方向はサンゴ石灰岩の基盤をなす八重山層群のそれと調和する場合が多く、島の地塊化がサンゴ石灰岩堆積以前にはじまったことを示しています(大村他,1994)。これらの断層は主に高角な正断層で、本島が伸長の場であることを示しています*P268。

また、第三紀堆積岩で構成されているという三重山列島では珍しい地質です。

与那国島の地質と形成年代は以下のようになっています。

与那国島の基盤は八重山諸島特有の八重山層群からなり、西崎層は最下層のグリーンタフ変動の影響を受けた淡緑灰色をした砂岩で構成されています。与那国島は石垣島などとは違って安山岩などの火成活動の証拠は見られません。

陸上部の地形の骨格を構成する要因は基盤岩である八重山層群の上昇期以後、琉球層群堆積時にかけて継続的に発生した断裂系によって、現地形が形成されたことで複雑な様相を呈しています。2つの地塁状山地・低下帯・山地周辺を取り囲む凹地・台地状地形域に区分されます*2。

八重山層群

八重山層群は砂岩ページ岩の互層からなり、全体として砂岩の卓越する砂質フリッシュ相が特徴です。岩相は互層のタイプと岩質によって4つに区分されます。

西崎層

西崎層は塊状の層厚の砂岩単層・5cm以下のレンズ状のページ岩との互層です。含ページ岩比は10%以下の砂岩がちの砂質フリッシュからなる層です。

砂岩は石英・長石粒の多いやや花崗岩質~凝灰質の不均一な中粒の粗粒砂岩で、概して青灰~暗灰色を呈する縞状砂岩です。
ページ岩は暗灰~黒色を呈する緻密質な板状ページ岩で、多くの部分はレンズ状を呈し横にはつながっていません。

N分帯のN.8に相当すると考えられる、さまざまな有孔虫化石の報告があります*2。

層厚は120m以上です。

久部良岳層

久部良岳層は砂岩ページ岩の互層で、砂岩が多い部分とページ岩が多い部分に大きく区分される層です。全体を通してページ岩がやや多い泥質フリッシュで、含砂岩比40~45%と推定されています。

ページ岩が多い互層部は葉片状の細互層(互層記号H4-H3:S1)、
砂岩が多い互層部は砂岩単層の厚い互層(互層記号S4:H1-H2)を形成しています。

砂岩は暗灰~褐灰色を呈する中粒-粗粒砂岩で,石英粒及び長石粒が比較的多く含まれますが,部分的に炭酸塩岩から由来する砕屑粒並びに炭片粒などが混入しています。
頁岩は暗灰色~黒色を呈する緻密な板状頁岩ですが層理面に平行した節理が良く発達しています*2。

層厚は180m程度です。

比川層

上部はページ岩が多い互層、中部は砂岩単層が厚く砂岩が多い互層、下部は砂岩が多い互層を示しています。全体を通して含ページ岩比30%程度の砂岩フリッシュです。

砂岩は青灰~灰色を呈する粒径0.2~0.4mm程度の丸い石英粒を主とする淘汰度が進んでいる均一質中粒砂岩で、石英粒及び長石粒が比較的多く含まれますが、部分的に斜交葉理のよく発達しているところもあります。
頁岩は暗灰色~黒色を呈する粗粒で枚状の葉理面よく発達しています。

この層の上位層準には八重山夾炭層である石灰層が介在しています*2。

層厚は300~330m程度です。

新川鼻層

新川鼻層は、上部がページ岩の多い互層、下部が砂岩が多い互層で構成されています。全体を通してはページ岩が優勢で含砂岩比は40%ほどのページ岩フリッシュです。

砂岩は青灰~淡緑灰色を呈する粒径0.2~0.4mm程度の丸い石英粒を主とする中粒-細粒砂岩で、炭質物の葉片が部分的に含まれます。この砂岩のうち、下半分の砂岩勝ちの互層のうち単層の厚い砂岩には、概して斜交葉理・斜層理及び平行葉理が顕著に発達するとともに部分的に団塊(径 30-50cm)が含まれています。

頁岩は暗灰色~黒色を呈する粗粒の枚状硬質ページ岩が形成され、部分的に砂質ページ岩となっているところもあります。

下半分に相当する砂岩勝ち互層の上位層準には、厚さ 15-20 cm 内外の薄い石炭層が介在します。石炭は前述した下位の比川層のものとは異なり、暗炭と輝炭との縞状石炭が存在します*2。

層厚は300mほどです。

琉球層群

琉球層群は、琉球石灰岩と非炭酸塩砕屑性堆積物で構成されています。

各石灰岩層の上位又は下位に見られる非炭酸塩砕屑堆積物を含めて、一つの累層の単元とし,三つの異なる岩相に対して下位からドナン層トウング田層サンニヌ台層と呼んでいます(画像参照含む*2)。

当サイトでは矢崎(1979)の地層区分に従いますが、その後の検討結果トウング田層及びドナン層に見られる田原川石灰岩及び峠石灰岩はレンズ状の形態を示して介在することから、石灰岩と非炭酸塩砕屑性堆積物を区分するために、トウング田層に含まれる非炭酸塩砕屑性堆積物を帆安部層と呼び、ドナン層に含まれる非炭酸塩砕屑性堆積物を久座部層と呼び区別した矢崎氏の報告書に合わせました*2。

したがって、下位から久座部層と峠石灰岩より構成するドナン層、帆安部層と田原川石灰岩より構成されるトウング田層、含礫砂層と馬鼻石灰岩より構成されるサンニヌ台層の三つの累層に区分しています*2。

ドナン層

ドナン層は石灰岩と非炭酸塩砕屑性堆積物の二つの岩質によって、久座部層と峠石灰岩に区分されます。

久座部層

下位の八重山層群由来の現地性砕屑性堆積物である礫・砂・粘土層が大部分を占めますが、木質亜炭の薄層が一部分に介在しています。礫は100%が八重山層群から由来とするもので、砂岩礫が大多数を占める中に一部ページ岩礫が介在しています。

また岩質級化の累重関係は、下位から上位にかけての上方細粒化堆積サイクルの形式が認められます。つまり、下位層準で礫層・中位層準で砂層・上位層準で粘土層を主とする傾向が見られます。

全体の関係はサンニヌ台海岸の海蝕断崖の中腹で見られます*2。

層厚は0~56mです。

峠石灰岩

石灰岩の岩片礫で、あめ色~褐色を呈しています。わずかに再結晶が見られ、礫径は5~7cm前後の大きさがほとんどです。

構成する礫は角礫状-亜角礫を呈する、石灰藻や化石を包有する砕屑性微晶質石灰シルト岩です。礫の間は風化生壌と考えられる砂質粘土が充填しており、褐色-黄褐色を占めしていますが、本石灰岩形成以後に雨水で流入したと考えられます。

サンゴ礁進化の経過のなかで見られる礁怪石灰岩やバックリーフあるいはトップリーフ性砕屑性石灰岩といった一次的な地層形成とは異なり、礁性石灰岩砕屈性石灰岩の岩体から由来した二次的な風化炭酸塩砕屈性岩片礫が沿岸性砕屑堆積物として形成されたものと考えられます。このことから、本石灰岩を局部的に発達させている要因だと推定されています*2。

層厚は0~4m前後です。

トウング田層

トウング田層を【砂層、砂礫層】【田原川石灰岩】【粘土層、砂層】の三つに区分する文献もありますが、当サイトでは【石灰岩】【非炭酸塩砕屑性堆積物】の二つに区分し、それぞれ田原川石灰岩と帆安部層とされています。

帆安部層

下位のドナン層久座部層と同じように八重山層群由来の砕屑性の礫・砂を大部分としますが、一部分に青灰-緑灰色粘土層及び繊維質埋木状亜炭層が介在しています。

礫質は、八重山層群から由来する砂岩礫及び頁岩礫の円礫ですが、圧倒的に砂岩礫が多い構成です。
砂質は、八重山層群の砂岩から由来する褐灰色-黄褐色を呈する中粒-粗粒の淘汰の悪い粗雑な砂で、主として、不透明石英粒であるが長石類及び炭酸塩砕屑粒なども見られます。
粘土質は、青灰色-青緑灰色を呈する粘性の強い細粒粘土です。

また、全体的な傾向として上方細粒化の傾向が見られます。具体的には、下位層準で礫層・含礫砂層、中部の層準で砂層・炭酸塩岩、上位の層準で粘土層・砂層によって構成されています*2。

層厚は0~60m弱です。

田原川石灰岩

田原川石灰岩は灰白色-白色を呈する炭酸塩砕屑砂と礁性堆積物・フォアリーフ砕屑性石灰岩によって構成され、それぞれ前者が上位層準、後者が下位層準です。

上位の炭酸塩砕屑堆積物は、主として炭酸塩砕屑性粗粒砂と八重山層群の砂岩より由来する砕屑性砂によって、全体的には7:3の比率で構成されています。このほか群体サンゴの小片が基質に関係なく散在することから、粗雑な炭酸塩砕屑砂層として観察されます。
下位の砕屑性石灰岩は、サンゴ腕足動物蘚虫動物石灰藻などを主とする塊状石灰岩と、有孔虫砂・石灰砕屑砂を主とするルーズな層状石灰岩との互層を呈しています。

層厚は0~15m前後です。

サンニヌ台層

サンニヌ台層は、坂井ほか(1978)の琉球石灰岩上位の礁石灰岩及び黒川ほか(1979)の琉球石灰岩Ⅰに相当する層準のもので,矢崎(1979)の命名です。

岩質的に上位の礁石灰岩と下位の含礫砂層に区分されますが、場所によっては礁石灰岩の馬鼻石灰岩が欠如したところも存在します。

含礫砂層

八重山層群の【砂岩・ページ岩】から由来とする円磨度のよい礫、砂岩礫に比べて小さく鱗片状のものが多いページ岩礫、八重山層群から由来とする砕屑性の砂で構成されています。

礫は、含礫砂層の層厚の薄い地域において礫径が50~100cmと大きく、かつ含礫率が大きいのに対して、層厚の厚い地域では礫径も5~10cm前後と小さくなるとともに含礫率が少なくなり含礫砂層が主体となる傾向が見られています*2。

層厚は0~10m前後です。

馬鼻石灰岩

馬鼻石灰岩は、礁性石灰岩褐灰色-あめ色を呈し、生物遺骸の中でもサンゴ蘚虫動物石灰藻を基質とする多孔質の塊状含礫質石灰砂岩で構成されています。ほとんどが大きさ10~80cm前後の成長位を示す円形~だ用状の不均一の群体サンゴ礁を多く介在しています*2。

また、基盤である八重山層群由来の砂岩・ページ岩の岩片礫が介在していることが特徴です。

層厚は4~20m以上です。

海岸域の地質

海岸域を形成する完新世堆積物は、祖内石灰岩・風化土壌・砂丘堆積物・氾濫原堆積物・段丘堆積物から構成されています。

海岸・海域の地質

海岸は主に完新世に堆積した風化土壌や石灰岩の砕屑礫といった周辺地質から由来した地層と更新世以降に形成されたサンゴ由来の地層で構成されています。

また、与那国島は船舶の操縦の際の基準となり、日本の沿岸の水源として定められています。

また、島棚と考えられる範囲は西表島や石垣島などと比較して極端に狭いのに対して、島南部海底の与那国-亀山テーラスは幅が広い特徴があります。

島棚以浅で比較的急勾配、水深-400m以深の島棚斜面にやや緩斜面を呈しています。また、水深-200mまではサンゴ」底質が多く、-200mより深い海底では大部分が礫・砂・泥によって構成されています。これは南西諸島の「サンゴ」底質の概略的なものよりやや深いことが分かっています。

完新世堆積物

祖納石灰岩

祖納石灰岩は、灰白色-白色で不均一粗雑な石灰岩岩片礫やサンゴ砕屑性礫を包有する含礫性礁性砕屑性石灰岩で構成されています。一部分が石灰藻類などの現地性の完全個体や礁石灰岩の完全なフレームワークを保存しているところも存在します*2。

層厚は2~7m程度です。

風化土壌

風化土壌層は、赤褐色-暗褐色を示しやや砂質で粘性に乏しい均一質粘土層です。低位標高の平坦面のものは薄い傾向が見られます*2。

層厚は0.5~3m前後です。

砂丘堆積物

砂丘堆積物は、いわゆる星砂と呼ばれる 白色-灰白色を呈する中-粗粒の有孔虫・貝殻・サンゴなどの礁性砕屑砂を主とする炭酸塩岩の砕屑砂で構成されていますが、一部には不鮮明な円磨度のよい石英粒も多く認められます。

上位層準には、一部分で二枚の埋没腐植土層である暗灰-暗黒褐色を呈すしている層厚 10~30 cm 内外の薄層を介在しています*2。

氾濫原堆積物及び段丘堆積物

水田耕地付近に発達する河川氾濫原及び低位段丘面などの表層を形成する礫・砂・粘土によって構成される堆積層を一括した、比較的低標高地に見られる地層です*2。

サンゴ段丘の海岸

与那国島のサンゴ礁段丘は高位のⅠから低位のⅣまでの4面に分けられます。特にⅢ面とⅣ面は明瞭なサンゴ礁段丘と判断されており、それぞれの酸素同位体ステージ7および5eに対比できます。Ⅲ面の最高高度は86m、Ⅳ面の最高高度は30mでそれから推定される隆起速度は0.2m/1000年以下に過ぎません。したがって、Ⅳ面より下位にサンゴ礁段丘面は存在しないと考察されています。

酸素同位体ステージについての説明は次のリンクから知ることができますのでよろしければご利用ください!

注目する点は、複数の海面変化によって形成されたサンゴ礁堆積物がひとつのサンゴ礁段丘を構成することがあるという現象です。すなわち、Ⅳ面での上下方向でのサンゴ石灰岩の層相を見ると、最下部の石灰藻球石灰岩から上位に向かってハリメダ石灰岩、砕屑性石灰岩、サンゴ石灰岩へと順次変化する2つの上方浅海化シークエンスによって構成され、両者にの間には不整合があります。そして上位のグループからはおよそ12~13万年前、下位のからは21~23万年前のウラン系列年代が得られました。つまり、ステージ7にあたる後者はⅢ面を形成するとともに、ときにはステージ5eにあたるⅣ面の基盤をなしていることがあります*1。

海底遺跡

与那国島近海水深20mに海食台による海底遺跡があり、観光地となっています。

1万年前からの海水面上昇が関係しており、水深数十mの平坦面は約1万年前以降に形成され、20mよりも浅いところは6000年前以降の海水面が今とはあまり変わらない時期に形成されました。海水面に近づくほど、地形を削る力が強いためであり、2万年前の時点では今よりも100mほど海水面が低かったとわかっています。

海底遺跡は人工か自然に作られたものかで議論になりましたが、人工で作れてしまうほど加工しやすいものが波の力に耐えられるとは考えにくく、人が加工できないほど頑丈な地質だからこそいまも残りつづけていると考えられています。また、直角や平面に割れやすい千数百年前の砂岩にできた節理の地形からも裏付けられています。

形成史

2000万年前以降
与那国島の地盤の形成

23~21万年前
サンゴ段丘Ⅲ面の形成およびサンゴ段丘Ⅳ面の基盤形成

13~12万年前
サンゴ段丘Ⅳ面の形成終期

1万年~6000年前
海底遺跡の形成

参考文献

*1 日本の地形7 九州・南西諸島 町田洋・太田陽子・河名俊男・森脇広・長岡信治編
*2 与那国島地域の地質 地域地質研究報告 地質調査所

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