石垣島のなりたち~サンゴ礁と溶岩の地質~【八重山諸島】

地理

概要

遠浅のビーチとサンゴ礁に囲まれる
透明度が高い海が特徴的な石垣島

そんな石垣島の地質や形成史の解説をしていきます

位置・形状

東京から1,950km、沖縄本島から410km、台湾からは270kmに位置する熱帯の島です。

面積は222.25km2、周囲162.2kmで、沖縄県では本島、西表島についで3番目の大きさですが、標高は525.5mと沖縄県で一番の高さです。

気候

石垣島 平年値 国土交通省 気象庁

年平均気温24.5℃、年平均湿度約75%の亜熱帯海洋性気候の島です。

石垣島の気象台の観測値を参考にします。

気温の変化を見ると、最寒月平均気温は1月の18.9℃で一年を通して18℃を下回ることがなく熱帯の気候区分に属し、月降水量が常に120mm以上であり、年間を通して基準の60mmを下回ることはありません。したがって、石垣島には熱帯雨林気候が分布しています。

地質

山岳の地質

概要

八重山列島の東端に位置する石垣島は、古生代~中生代の八重山変性岩類、第三紀の宮良層群、および火山深成複合岩体から成る山地とそれを取り巻く琉球層群からなる海成段丘の存在が特徴的です。

島の中南部には島の最高点である標高526mの於茂登山があり、火山深成複合岩体の花崗岩からなります。山頂には浸食小起状面が見られます。まら宮良層群中の石灰岩は東部で円錐状~塔状のカルスト地形を呈しています。

石垣島の南部では琉球層群からなる海抜段丘群が広く、琉球層群の最下部に相当するブネラ粘土層の軟体動物相の特徴から、ブネラ粘土層を沖縄本島の読谷石灰岩に対比しました(Foster,1965)。

南部一帯を6面に区分し、最高位段丘面の旧汀線高度を90mと推定されています(木庭,1980)。さらにブネラ粘土層からナンノ化石のE.huxlexyiの普通産出(酸素同位体ステージ6/5:13万年前以降)を認めたことにより、ブネラ粘土層を含む琉球層群から構成される段丘は、すべて同位体ステージ5e以降の段丘面と考察しています(木庭,1980)。

酸素同位体ステージについての解説は以下のリンク先で行っています。
よろしかったたご確認ください。

一方で、Koba et al.(1985)はナンノ化石のE.huxlexyiの普通産出時期(木庭,1980)について再検討した結果、同位体ステージ5e以前の時期が妥当であるとして、その後、ブネラ粘土層のESR年代として平均20万年前の値を得たことから、ブネラ粘土層を同位体ステージ7に対比しました。

石垣島南部の牧中台地などには、段丘面の背後に比高数m~10mの明瞭な段丘崖をもつ旧汀線高度約20~30mの段丘面が発達しています。ブネラ粘土層のESR年代値および段丘面の地形的特徴から旧汀線高度約25~30mの段丘面が同位体ステージ5eである可能性も考えられ、石垣島における段丘面の時期については今後も再検討が必要としています。

サンゴ礁段丘を変形させている短いC級活断層が5本発達していますが、大規模な断層はありません。

石垣層群

ペルム紀と考えられているトムル層は緑色片岩・藍閃石(クロス閃石)片岩・石英ー白雲母片岩・石墨片岩で構成されており、竹富島・小浜島・西表島・嘉弥真島の各島に分布する変成岩もこれに含まれるとしています。

石垣層群の堆積相と変成度の違いによってトムル層とフサキ層で分類されます*2。藍閃石片岩(青色片岩)に特徴づけられる塩基片岩・砂質片岩・泥質片岩および斑れい岩からなる高圧低温型の藍閃変成作用を受けたトムル層と、変成度の低い砕屑岩類からなるフサキ層に分類されます*3。

トムル層

伊原間半島・平久保半島・米原-宮良を結ぶ直線よりも東側の地域などに分布する藍閃石片岩・緑色片岩・石英-雲母片岩・石墨片岩をトムル層と呼びます。この層は黒色片岩と緑色片岩が互層している部分が多くみられ、層理面と片理面は平行で、斜交した部分は見られません*2。

石垣層群トムル層の化石が発見されず、年代未詳でしたが、トムル崎の泥質片岩中の白雲母のK-Ar年代とRb-Sr年代を測定し178Ma、202Maの値、変成度が異なる石垣島全域に分布するトムル層中の白雲母のK-Ar年代を測定し230Ma-160Maの値が得られています*3。

トムル層の名称の由来となったトムル崎では緑色片岩が石英-雲母片岩・雲母片岩・石墨片岩などと互層しており、層厚は500mほどにもなります。久宇良南東山地および伊良原半島山地に分布するトムル層の上部では黒色片岩と緑色片岩が約100mの厚さで互層します。

屋良部半島に存在するトムル層の下部のうち大崎付近に存在する緑色片岩は剝離性に富み、片岩の中に大きさが1~4mmほどの黄鉄鉱の結晶が見られるところも存在します。

総層厚は2100m以上と見積もられてます。

フサキ層

嵩田南方からバンナ岳-観音崎にいたる地域や崎枝から名蔵にいたる山麗地域、赤崎や竹富島に分布するチャート・砂岩・千枚岩・石英-雲母片岩・ホルンフェルス・結晶質石英岩で構成される層をフサキ層と呼び、凝灰岩を含みません*2。K-Ar年代によるフサキ層の変成作用時期は129-144Maで前期白亜紀であると分かっています。

嵩田南部から観音崎にいたるフサキ層では千枚岩が破砕帯で広く破砕されて石墨化しており、破砕した一部には結晶質石灰岩も見られます。下部は千枚岩から成り、上部は層状チャートで層厚約60mが露出し、そのさらに上位の厚さ20mほどのチャートが観音崎で露出しています。

千枚岩の中に挟在する礫状の砂岩塊は大きさは数mm~5m以上とさまざまです。それらの中には厚さが変化しながら単層の形を残してのびる部分も確認され、これがプーディン構造を呈する砂岩層であると示しています。チャートは千枚岩薄層をを挟む層状チャートで、層内で著しく褶曲しています。

バンナ岳付近では下部から厚さ15m以上の千枚岩、厚さ6m以上の塊状砂岩、千枚岩、厚さ10m以上の褶曲した層状チャートが順に重なっています。礫岩状砂岩や結晶質石灰岩の中にはレンズや岩塊とみられるものも存在しています。また、フサキ層で微褶曲はほとんど発達しません。

層厚は350mを超えるとみられてます(バンナ・観音崎付近)。

宮良層群

宮良川層

始新世と考えられている宮良川層は、石灰岩を主とする地層で石垣島の石垣市宮良北西付近に分布します。伊原間付近のほかには石垣市街地北東2kmの丘などで露出が見られます。礫岩・砂岩・シルト岩および石灰岩からなり、最上部には凝灰質砂岩が挟有しています*3。

そして、宮良川層の含有化石(浮遊性有孔虫化石および石灰質ナンノ化石)から中期~後期始新世(46Ma~34Ma)であるとされています*3。石灰岩の中には石灰藻・サンゴ・大型有孔虫化石が含まれています*2。

全体として層厚は70m程度であり*2、厚いところでは伊原間北西方の海岸において約80m、大里北東地区の採石場で約90m、薄いところでは、大浜の東の海岸では約20m、久字良南西の海岸においては10m未満とされています*3。

野底層

凝灰岩・凝灰角礫岩・溶岩から構成される火山岩類が野底層です。この層は、野底北東3kmの海岸や野底半島に広く、そのほか星野付近・石垣市北東3km付近・川平半島西部・屋良部半島北西部に分布しています*2。

野底層の多くは層理面の発達する凝灰岩から構成され、野底半島南東域では約6割を占めています。細粒~粗粒で淡緑色~緑色を呈し、砂岩凝灰岩には生痕化石が認められます。最高峰野底岳を含む北西部には凝灰角礫岩が分布し、安山岩を主体とする礫を多量に含み、礫よりも基質の方が淡緑色を示します。安山岩礫とは別に、暗灰色の安山岩溶岩が大野西方の山麗にてある程度の露出が認められます。

層厚は野底石崎にいたる海岸線で450m、野底半島全体では500mに達すると考えられています*3。

そのほか、安山岩礫や流紋岩礫を多量に含む流紋岩溶岩などが一部分で分布します。

貫入岩類

主な貫入岩類は、流紋岩岩脈・斑岩岩脈・安山岩・石英脈群・輝石安山岩岩脈です。

流紋岩

平久保半島明石付近でトムル層に、野底半島大浦周辺で野底層にそれぞれ貫入する岩類が流紋岩岩脈です。石基鉱物は0.05~0.1mmの石英、斜長石、カリ長石、不透明鉱物から構成され、半自形~他形で斑晶鉱物間を充填しています。

それぞれの地点での流紋岩のET年代の測定により、明石で\( 47.5 \pm 3.0 \)Ma、崎枝で\( 44.1 \pm 1.8 \)Ma、川平で\( 43.5 \pm 1.8 \)Maが報告されています(大四ほか,1987)。いずれの流紋岩岩脈も第三紀始新世を示します。

岩脈の厚さは20m程度です。

斑岩

川平石崎で野底層に貫入する岩類が斑岩岩脈です。これらの斑岩は一般的に均質で淡緑色を呈しています。始新統の野底層に貫入していることから始新世以後の活動だと推定されます。

斑岩:肉眼で淡緑色、鏡下では完晶質で、ボイキリティック組織を呈しています。斑晶鉱物は斜長石で、自~半自形、長径およそ0.5mm
安山岩

大野崎・野底石崎で野底層凝灰角礫岩に迸入する岩類が安山岩貫入岩です。

大野崎で確認される安山岩は肉眼で暗緑色を呈する輝石安山岩で斜長石・輝石の斑晶が認められます。大浦川から野底石崎で確認される安山岩はわずかに斜長石の斑晶が認められ、流理構造が顕著です。

大野崎の輝石安山岩のK-Ar年代は \( 27.7±0.7 \) Ma、野底石崎の安山岩は \( 28.1±0.7 \) Maで誤差の範囲で一致しています。

石英脈

平久保半島北部でトムル層に貫入する岩類が石英脈群です。トムル層の最下位にあたる層厚は数10mで淡赤色~赤色になった熱水変質帯が形成されており、広域に数mm~mの厚さで石英脈群が確認されています。

この石英脈に伴った数mm~10数mmの黄鉄鉱脈や赤鉄鉱脈が認められます。数cm~mオーダーの板状の石英脈中には変質粘土化したトムル層の角礫構造が見られるほか、多くの大きさ数mm~数cmの小孔があり透明~半透明の玉随や粗粒櫛歯状石英が観察されています。

輝石安山岩 

野底崎で野底層凝灰角礫岩に貫入する岩類が輝石安山岩岩脈です。安山岩岩脈のK-Ar年代は\(3.13±0.17\)Maで鮮新世を示しています。

この地質によって鮮新世での火成活動が明らかになりました。

琉球層群

石垣島に分布する更新統の石灰岩と砂礫は、琉球列島の普遍的な名称である琉球層群と呼ばれています。そして琉球層群は礫岩を主とする層を名蔵層、石灰岩を主とする層を大浜層で構成されています。

名蔵層

石垣市名蔵付近で宮良川流域から島中央部に広く分布する、半固結の礫岩・砂岩・泥岩からなる地層が名蔵層です。名蔵層はトムル層を覆うように分布しています*3。

三分される層によって構成され、下部砂礫層が5~10m、中部泥層が最大40m、上部砂礫層が最大40m,平均20~30mとされています(沖縄県,1985)。

名蔵層からは化石は産出されていないが、付近のブネラ粘土部層から海棲無脊髄動物化石が多く産出されています。ナンノプランクトン化石は後期更新世のNN20,NN21の化石帯を示し、石灰質ナンノ化石やサンゴ化石も認められます。以上のESR年代の測定の結果により、名蔵層は中期~後期更新世の堆積したものです*3。

大浜層

礁性のサンゴ石灰岩・礫質あるいは砂質石灰岩から構成され、島周縁部の0~60m付近、そして、石垣島南部の60~80mより低くなだらかな地形を有する地域にもっとも広く、トムル層・宮良川層・野底層を覆うように分布しています。

大浜層はサンゴ石灰岩が主体で、大部分が枝状サンゴ片・塊状サンゴ片で軟体動物や有孔虫も含まれる生砕屑性石灰岩、砂質~礫質石灰岩が見られます。野底層分布域周辺の大浜層の下部には著しく陸源砕屑物が含むことが少ないことから海浜から礁池を経て礁前縁にかけて堆積したと考えられています。

石灰藻・有孔虫・造礁性サンゴ・軟体動物・棘皮動物・コケムシ動物など極めて多くの化石を含むことから名蔵層とは同時異相の後期更新世に堆積したと考えられています*3。また、名蔵層の砂礫が漸移もしくは互層することからも指交関係にあり、同時異相であることが示されています。

海浜堆積物

軟弱なシリト粘土が堆積する沖積層、石灰質生砕屑物と軽石層で構成される砂丘堆積物、サンゴ礁由来の生砕屑物と礫,リーフブロックでなる海浜砂、海浜砂が固結してできたビーチロックが分布しています。

海岸・海域の地質

北東部の伊原間の礁原のボーリング調査によると、完新世サンゴ礁は約8500年前から堆積を開始しました。ノッチ後退点が約+2mと最も高い高度をもつ東南部の大浜海岸の礁原には、完新世サンゴ礁が発達しており、最も陸側には約7000~6000年前を示す潮間帯上部のサンゴ礁が分布しています。

西表島との間にある石西珊湖は西表石垣国立公園に指定され、360種類以上のサンゴが生息しています。

沖積層

石垣島の河川沿いには、沖積低地を形成する沖積層が分布しています。

宮良川と名蔵川にそった低地には海成沖積層が分布し、軟弱なシリト粘土が堆積しています。土の締まり具合や強度を表すN値(標準貫入試験値)は5以下と、地震の際には液状化現象が危惧されるやわらかめの地盤です。

吹通川河口付近にはマングローブの林が発達しており、マングローブ湿地を形成しています*3。

砂丘堆積物

砂丘堆積物は石垣島の海岸沿いに発達する層厚10m程度の砂丘です。幾枚かの軽石層を挟む石灰質生砕屑物で構成されています*3。

白保では、砂丘堆積物の中に黒色埋没腐植土層が挟まれていて、上位層の絶対年代は1,300 ± 100 年 B.P.(1,400~1,200年前)を示しています(沖縄県,1985)。

海浜砂

周辺海域で発達するサンゴ礁由来の石灰質生砕屑物が多く占める海浜砂が海岸に沿って幅狭く分布しています。砂丘が発達する場所では漸移的に移り変わります。

下位の地層を由来とするさまざまな大きさの礫が混ざり、波浪によって打ち上げられたと考えられる現世サンゴ礁のパッチリーフの破片である「リーフブロック」の巨礫も多数みられます*3。

ビーチロック

海浜砂の一部が固結したものである「ビーチロック」が海岸に散見されます。そのほとんどの面積は大きくなく、ルーズで間隔が大きく、層状の構造をもっています。海浜砂に比べて下位地層由来の礫の割合が高いです*3。

形成史

石垣島における特徴的な地質をまとめた表が以下になります。

年代地質年代堆積した地層
2億9,890万
~2億130万年前
後期ペルム紀
~三畳紀
石垣層群 トムル層
~6,600万年前先第三紀石垣層群 フサキ層
4,600万
~3,390万年前
中期~後期
始新世
宮良層群 宮良川層
~3,390万年前後期始新世宮良層群 野底層
23万~1万年前中期~後期
更新世
琉球層群 名蔵層
~1万年前(中期~)後期
更新世
琉球層群 大浜層
1万年前~完新世海浜および低地堆積物
~現代現世現世堆積物
変成作用の時期前期
2億3,000万~1億6,000万年前:後期三畳紀~中期ジュラ紀 トムル層
1億4,400万~1億2,900万年前:前期白亜紀 フサキ層

野底層中の安山岩溶岩のK-Ar年代 7300万年:後期白亜紀

3億年前~
石垣島および琉球列島の最古の地質・島の基盤の形成

2億年~1億年前
圧力や温度の変化による変成作用の発生→泥質片岩などの変成岩の形成

5,000万年前~4,200万年前
流紋岩岩脈の貫入岩類が形成

2000万年~1500万年ごろ
始新世中ごろにおけるグリーンタフ変動の発生。野底層での凝灰岩の緑色化がこれに相当*4。

グリーンタフ変動:陥没盆地の発生→海底火山活動→隆起に至る地殻変動。火山噴出物は広域・熱水変質のため緑色化する。

1,000万年前以降
南琉球が 最終的には時計回りに19度回転する 移動の開始

313万年前ごろ
鮮新世での火成活動

12.5万年前以降
琉球層群からなる海抜段丘群の形成

2万7,000年前ごろ
人類の生活の開始

8500年前~
完新世サンゴ礁が堆積し始める

石垣島の特色

2万7千年前の全身人骨が白保竿根田原洞穴で見つかりました。この全身人骨は日本最古であり、その時代に人類が生活していたことを示しています。

また、地質調査によって2000年間のうちに4回の津波があったことがわかっています。

参考文献

*1
*2 八重山諸島 石垣島・西表島の地質 国立情報学研究所 東北大学理学部
*3 石垣島東北部地域の地質 金子 慶之・川野 良信・兼子 尚知
*4 グリーンタフ変動 琉球新報 2003.03.01

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