地質でみる火成活動
伊豆-小笠原-マリアナ弧
伊豆・小笠原・マリアナ弧における島ができた時期はいつ頃なのでしょうか。
小笠原諸島と伊豆諸島・マリアナ諸島を比較するにあたって琉球列島の地質や海洋島も参考にしていきます。
火山岩の型似たような地質によって以下のように割り当てられます*1。
地質の分類 | 見られる地域 | 特性 |
---|---|---|
BSG型 | 小笠原諸島,サイパン島, グアム島のソレーアイト | カルクアルカリ岩系の進化傾向 |
RKK型 | 琉球列島,千島列島, カムチャッカ半島のソレーアイト | BSGと似たカルクアルカリ岩系の進化傾向 |
OMM型 | 大島,マリアナ諸島といった 火山島のソレーアイト | ソレーアイトの進化傾向 (カルクアルカリ岩系とは対称的) |
混合型 | 明神礁の火山岩 | ソレーアイトとカルクアルカリ岩系の双方の性質 |
火山岩を生成された時代ごとに分類すると次のようになります。
火山岩の分類 | 型 |
---|---|
第三紀火山 | BSG型 |
第四紀火山 | RKK型,OMM型,混合型 |
このように分類されると考えられる理由を地質をもとに考察していきます。
また、小笠原諸島が生まれた後にできた四国-パレスベラ海盆の成因は、海洋底拡大説、海洋化作用説、そのほかいずれかの学説など複数の学説が存在しています。
SI-TiO2のダイヤグラムから考察します*1。
SI-TiO2の含有量を比較すると
海洋島ソレーアイト>海洋性ソレーアイト>OMM型≧RKK型≧BSG型
となります。
SI-TiO2分布をそれぞれの分類における特徴を抜粋すると
- BSG型は極めて低い
- RKK型はBSG型の上部と重なる
- OMM型の下部がRKK型、BSG型と重なる
- 東太平洋海底山脈のソレーアイトはOMM型、RKK型、BSG型のいずれより高い
- 海洋性ソレーアイトは海洋島ソレーアイトよりも著しくTiO2が乏しい
したがって、SI-TiO2の含有量が生成時期と相関があることが分かります。
他の地質的条件も考慮した上で、RKK型の特徴を参考資料として小笠原諸島が分類されるBSG型と伊豆諸島とマリアナ諸島が分類されるOMM型を比較検討します。
- 第三紀火山のBSG型と第四紀火山のRKK型は類似点が多い
しかし、第四紀火山のOMM型とは明らかに性質が異なっている - BSG型はOMM型に比べて、【SiO2】,【Na2O】,【K2O】,【Na2O+K2O】に富んでいる
BSG型はOMM型に比べて、【TiO2】,【FeO】,【Fe2O3+FeO】,【NgO】,【CaO】に乏しい - 伊豆-小笠原-マリアナ弧上における第三紀火山のBSG型と第四紀火山のOMM型の対称的な相違点
マントル内の物理化学条件の変化に対応するものであり
第三紀以前のこの海域に存在していた大陸地殻の海洋化作用=大陸物質のマントル内への溶解
→カルクアルカリ岩系物質の濃集→特定の元素割合の上昇
という作用が第三紀火山に強力に反映されたことが分かっている
(OMM型ではこの作用が不十分であるため、BSG型とは異なる進化傾向になった) - 海洋底拡大説の基づく、RINGWOOD-GREENモデルでは説明できないため、海洋化作用説が優勢
これらの条件により伊豆-小笠原-マリアナ弧において、小笠原諸島は伊豆諸島・マリアナ諸島に比べて古い時期に生まれた島々だと考えられています。
酸素同位体ステージ
酸素同位体ステージとは天然に存在する酸素同位体の比率と過去の気温に基づくステージ区分です。この区分では間氷期(温暖期)と氷期(寒冷期)をステージに分けて表現されています。そして260年前までのステージ割り振りされており、ナンバリングは100以上となっています。
以下は年代とステージ番号とアルファベットの一部対応表です。
年代 | 番号 | 順 | 備考 |
---|---|---|---|
24万年前 | 7 | e | 間氷期の暖かい時期 |
21.5万年前 | c | 間氷期の暖かい時期 | |
20万年前 | a | 間氷期の暖かい時期 | |
18.5万年前 | 6 | f | 氷期の寒い時期 |
17.8万年前 | e | 氷期の暖かい時期 | |
15万年前 | c | 氷期の暖かい時期 | |
14万年前 | b | 氷期の寒い時期 | |
13.5万年前 | a | 氷期の暖かい時期 | |
12.5万年前 | 5 | e | 最終間氷期の暖かい時期 |
10.5万年前 | c | 最終間氷期の暖かい時期 | |
9万年前 | b | 最終間氷期の寒い時期 | |
8.2万年前 | a | 最終間氷期の暖かい時期 | |
7万年前 | 4 | 最終氷期の始まり | |
3万年前 | 3 | 最終氷期 | |
2.1万年前 | 最終氷期の最寒冷期 | ||
2~1.5万年前 | 2 | 最終氷期の終わり | |
0.7万年前 | 1 | 縄文海進最高海面期 |
新しい(最近の)時期から1…2…3…とナンバリングされ、番号が付けれられた期間中の暖かい時期と寒い時期の変化に合わせてアルファベットが付随されています。つまり過去になるにつれて番号が増えていくということです。
参考文献
*1:島弧と海洋 編者 星野通平・青木斌
*2:Hakuryu5jp – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118737700による